建築費の高騰が止まりません。
物価の上昇は不動産の周辺でも様々な影響を与えています。
例えば家賃相場のメカニズムがあります。
本来、賃貸条件とは、「貸したいという供給」と「借りたいという需要」の最大公約数が、
家賃や礼金といった諸条件になるものです。
この立地でこの間取り、この築年数ならば、
家賃はいくらまでなら払ってもいいという借り手の許容上限。
同じく、この立地でこの間取り、この築年数ならば、
家賃はいくら以上は欲しいという貸し手の許容下限。
貸し手と借り手では利益が相反するものですから、
私たち賃貸不動産会社はその調整を図って家賃を設定しています。
これは本来あるべき市場の理論です。
ところが近年は色々なものの価格高騰により、特に建築の領域では、
資材の高騰に加えて、キッチン、浴室、エアコン、給湯器といった設備なども高くなっていますので、
アパートやマンションを建築する際の費用もどんどん上昇しています。
アパート経営は「事業」ですから収益性を重視します。
投じる費用が高くなると当然利回りは下がります。
建築会社がそれでも売るためには利回りを良くしなければなりませんので、
最近の新築では先ほどの市場原理に反し、
建築費(コスト)からオーナーの求める利回り(欲しい収益)を割り戻して
家賃を決めることが増えています。
そうすると、家賃は当然相場から高ぶれしてしまいますので、
新築のプレミアムやどうしてもこの場所でなければならない、この間取りがいいといった、
割高と分かっていても購入する極めてニッチな層のお客様を除いては、
どれだけ物件が良くても入居希望は低調となります。
そのこともあり、ここ数年は新築が満室で竣工することがほとんどなくなりました。
入居者がいないとそもそも家賃が入ってきませんから、
結果としてオーナーは想定した収入を得ることができなくなってしまっています。
そんな現象が各処で見られます。
当社の社是は三方善し。
自分と相手さえ良ければいいという考え方で市場に物件を投入すると、
結果的に相場も崩すことになります。
それどころか、目先の利益だけを優先すると、三方善どころか二方善にすらならず、
請負を受注した建築会社だけが得をする一方向の利己的な仕事になってしまいます。
だからせめて、私たちは自分たちが関わった物件では三方善の社是の下、
二十年、三十年先の三方の未来を考えて正しいアドバイスを心がけています。