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弊社では年に1度発行する社内報で、
社員から記憶に残る現場エピソードを収集し、社内公開しています。
その中のエピソードをご紹介いたします。
悲しみの深い現場で私たちができることを考えさせられ、情景が浮かぶグッとくる投稿文です。
まだ、おとなの膝くらいの背丈の娘さん2人をのこして、亡くなった若い男性。
奥様はどこを見ているかわからないようなうつろな目で幼い2人の娘を両腕に抱えながら、
「もう抱っこはしてもらえんのよ。
わがまま言っちゃいけんよ。」と
呪文のように低い声で呟いていました。
お傷を隠し、飛び出した舌をしまい、変色した顔色を自然に整えたのですが、
奥様の目と呪文のような言葉があまりにも悲しくて
「ご様子をみていただいて、よろしければ…」
「ご納棺になります、」と続けることができませんでした。
「よろしければ、最後の抱っこ、私たちにお手伝いさせていただけませんか?」
とっさに出てきた言葉でした。
奥様がゆっくりと顔をあげ、
「抱っこ…?」と、涙声に変わり、ようやく目が合いました。
「みなさまも抱きしめてあげてください」と
故人さまの片腕をとると、同行スタッフも私の意図を察してくれて、もう片腕を開いてくれました。
無我夢中でした。
故人さまの胸で泣きじゃくる奥様の背中を、故人さまの腕で抱き留め、さすりました。
故人さまのお父さま、お母さま、ご兄弟もみな、堰を切ったように涙を流し、奥様に続いて故人さまを抱きしめました。
ご納棺が無事に済み、涙ながらにご遺族さまたちから感謝の言葉をいただいた時、
納棺師という仕事の可能性を感じました。
限られた時間のなかであれば、もうできないだろうと思っていたことが叶えて差し上げられる。
閉じないと思っていた口が閉じた。
思い出の服を着せてあげられた。
もう一度、抱き合うことができた。
そんなかけがえのないことのお手伝いができるなんて。
それも私たちにしかできないなんて。
素晴らしい仕事に出逢ってしまったと。
まだひとりだちして数か月の忘れられない出来事が、
今の私をつくっています。