今回はグループホームでの旅行について紹介します。
※注 旅行はコロナまん延前に実施した内容となっています。
みんなが最も緊張していたのが、空港の持ち物検査。
あれほどポケットから出しておいてといったのに、Aさんが引っかかります。
「ポケットに携帯入ってないですか」
「あ~これ」
「じゃもう一回くぐってください」
「ピーッ」
「まだなんかありますね」
「あ~これ 鍵」
「じゃもう一回」
こういう場合、待たされている一般の乗客たちが苛立つのではないかと職員はひやひやします。
でも本人は必死。びくびくしながら金属感知のゲートをそぉっとそぉっとくぐっていく。
そおっとくぐっても同じでしょ!
でもその必死さが可笑しくて、周囲の人たちも笑いをこらえて見ている。
「ピ-ッ」 また鳴った。
まるで大事な試験に落ちたかのように、ゲートの向こう側でがっくり肩を落としうなだれる。
係員が近寄ります。
本人は何を思ったか、「降参!」とばかりに両手を上げる。
見ている人はみんな肩を震わせて必死に笑いをこらえている。
「おかしいですね。金属のものほかに身につけていませんか。もう一度やってみましょう」
引き換えし、抜き足差し足、おそるおそるくぐろうとする。
「あっ」 突然本人が振り返えりカパッ!と入れ歯をはずし、係員の持つトレイに乗せる。
そしてゆっくりゲートをくぐる。
通過!!
歯の無い顔で振り返り、満面の笑み、拳を突き上げガッツポーズ!
職員もガッツポーズ! 観客は大笑い。
トレイの上にポツンと残された入れ歯が、とても恥ずかしそうでした。
まるでコントのような一幕でしたが、苛立たず笑って見守ってくれた一般の方々に感謝です。
彼らが失敗したときに、周囲がそれをどうと取り上げるかで場面は全く違ってきます。
飛行機に乗り、新幹線にも乗り、ねぶたの展示や遺跡を見たり、
たくさん食べて、たくさん飲んで、泣いて笑って楽しい旅行でした。