社会福祉法人　白寿会

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施設に、ある利用者が入所されました。

その方はかつて、学校で美術を教えていました。
もちろん、自分でも絵を描くのが好きで
休日などは絵筆を持って外に出かけるほどでした。

しかし脳梗塞により半身麻痺を患い、今では利き腕を自由に動かすことができません。
本人も「もう絵は無理だろう」とあきらめていました。

白寿会で働く介護スタッフたちは
本人のそんな経歴を聞き
「本当はまだまだ絵が描きたいのではないか」という本音を感じ取りました。
そこで「私たちがサポートします。自由に動く左手で絵を描かれてはどうですか」
とおすすめしました。

本人は迷っているようでした。
介護スタッフは早速、色紙を1000枚用意して
「ともかく、描いてみませんか？」と働きかけました。
その熱意に動かされるように、
かつて美術教師だったその利用者は、再び筆をとりました。

利き腕でない分、満足にはいきません。
しかし磨かれた技術や美的感覚まで衰えたわけではありません。
何枚か筆を重ねるうち、どんどん勘を取り戻されたようでした。

やがてその方は
何枚も貯まった色紙の絵で、個展を開かれたのです。
銀行のロビーを使った、ごく小規模のものです。
それでも、その方の美に対するこだわりが十分に感じられる絵で
見に来た方々は口々に「素晴らしい」と絶賛されました。

個展の後、介護スタッフはその方から
「私に再び絵を描くように勧めてくれてありがとう。
みなさんのおかげです」と感謝の言葉を頂きました。

高齢者は、一人ひとりで異なります。
その方々の個性に合った福祉サービスを提供することで
彼らは活き活きと、自ら動き始めるのです。
絵を描くことで、自らの個性を取り戻した元美術教師の方のように。

「その人が、その人らしく生きるために」
私たちは全力を尽くしています。
そんな私たちの姿勢に共鳴できる方を求めています。