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航空・空港

(1)航空・空港業界の概況

航空業界は、人を運ぶ「旅客」分野と、荷物を運ぶ「貨物」分野に分けられる。

旅客分野は好調だ。国土交通省の「航空輸送統計調査年報 平成27年分」によれば、2015年(暦年)の国内旅客数は9587万人で前年より1.4パーセント増。また、国際旅客数は1825万人で前年より11.6パーセント増だった。東日本大震災の影響などで旅客数が大きく落ち込んだ2011年(国内7759万人、国際1216万人)に比べると、国内市場は2割、国際市場は5割以上伸びている。背景にあるのは、中国をはじめとするアジアからの旅行者が増えたこと。また、原油安で燃料コストが下がり、航空料金が手軽になったことも追い風となっている。

一方の貨物分野は、国内貨物が安定、国際貨物が拡大という状況だ。前出の年報によると、2015年の国内定期航空輸送の貨物重量は91万9356トンで前年より1.8パーセント減だった。ここ数年は、90万~95万トン程度で推移している。一方、国際航空輸送の貨物重量は前年より3.2パーセント増の140万2155トンで、こちらは4年連続で増えている。

旅客需要が最も高いのは、東京を中心とした首都圏。2020年には東京オリンピックも控えており、ニーズがさらに拡大すると期待されている。そこで、成田国際空港と東京国際空港(羽田空港)は、発着便を増やすために努力を重ねている。成田国際空港は2015年4月、LCC(Low-Cost Carrierの略、格安航空会社)向けの施設「第3ターミナル」をオープンして利用者増に対応する準備を整えた。また、羽田空港では発着枠を増やすために飛行ルートの見直しを検討している。現在の飛行ルートは都心部を避けているが、都心上空を通る新ルート導入でかなりの増便が可能になるという。騒音問題などもあり、先行きには不透明な部分も多いが、関連ニュースにはぜひ注目しておきたい。

貨物輸送では、沖縄の那覇空港を「ハブ空港(複数の空港をつなぐ中核的な拠点空港)」化する動きに注目したい。沖縄は中国や東南アジアに近く、通関の24時間化も実現している。そうした特徴を生かし、沖縄を中継拠点とした空運網が整備されつつあるのだ。例えば、日本の主要空港から夜のうちに沖縄に物品を運び、沖縄で積み直した後、早朝にはアジア各国に向け、飛行機を飛び立たせることが可能だ。

明るい材料が多い航空業界だが、パイロット不足は懸念されている。国際民間航空機関(ICAO)の推計によれば、2010年時点における世界のパイロット数は46.3万人であった。これが2030年になると、98.1万人のパイロットが必要になると予測されている。さらに、国土交通省航空局の就労実態調査によれば、国内の航空会社ではパイロットの年齢構成が40代に偏っているため、2030年前後に大量の定年退職者が出る見込みだ。各社は人員不足を補うため、パイロットの給与引き上げや、育成システムの強化、指定の学校に通うパイロットを目指す学生に向けて奨学金を給付する、などに取り組んでいる。

(2)航空・空港業界の仕組み

航空会社は、「メガ・キャリア」(Mega Carrier、大規模航空事業者)と前述した「LCC」に大別できる。メガ・キャリアは質の高いサービスなどが売りで、数多くの運航路線を整備して乗客の利便性を高めるなどの努力を重ねている。一方、LCCの最大の特徴は低料金だ。
飛行機での移動に、快適さや食事・機内読み物などのサービスを求めず、安く移動できれば十分と考える人は、世界規模で見れば一定数いる。LCCは、こうしたニーズを上手に取り込んで成長を続けている。国土交通省によると、東南アジアにおけるLCCのシェアは5割以上。欧州や北米でも3割以上に達した。これに対し、日本のLCCシェアは2014年時点で国内線7.6パーセント、国際線7.5パーセントにとどまるが、政府が2015年2月に決めた「交通政策基本計画」では、2020年のLCCシェアを国内線14パーセント、国際線17パーセントまで伸ばすことが定められており、LCC各社には追い風と言える。

一方、メガ・キャリア側はLCCとの競争に打ち勝つため、さまざまな取り組みを進めている。その一つが、これから需要が高まりそうな新興国市場での路線拡大だ。新興国の航空会社に出資して業務提携、「共同運航便(後述)」を増やすことなどで訪日外国人の利用増を目指す企業もある。アジア、中南米などに新たな路線を開いて「ドル箱路線」に育てることができれば、航空会社の経営は大きく上向くだろう。また、政府や旅行会社などと協力して日本の魅力を海外にアピールする動きも活発だ。

空港では、増え続ける訪日外国人にスムーズに対応するための取り組みが進んでいる。特に求められているのが、首都圏の玄関口である羽田空港(東京国際空港)と成田国際空港の拡充だ。現在、羽田空港では5本目の滑走路、成田空港では3本目の滑走路の建設が模索されている。もし実現されれば、飛行機の発着枠を大きく増やすことができる。また、ビッグデータ分析の結果に基づいて案内サインを適宜変化させ、空港内の人の流れをスムーズにするなど、ITを活用した取り組みも行われている。

(3)航空・空港業界のHot Topics

海外から日本を訪れる人(訪日外国人)の数が、ここ数年で急増。航空・空港業界にとって、強い追い風となっている。

訪日外国人の増加

ビザの条件緩和や円安などが有利に働き、2011年に622万人だった訪日外国人旅行者数は、2015年には1974万人まで増加。政府は、2020年の訪日外国人旅行者数を4000万人にまで引き上げる目標を立てている。

共同運航便の運航

共同運航便とは、複数の航空会社が共同で飛ばす便のこと。コードシェア(code sharing)便とも呼ばれる。航空会社にとっては、自社が運航していない路線で経費を抑えながら座席を確保できるのがメリット。海外からの利用客にとっては、日本国内を移動する際も自国の航空便として利用できるので、安心感を提供できる。

世界的なアライアンスの存在

アライアンスとは企業連合のこと。航空業界には、「スターアライアンス」(全日本空輸などが参加)、「ワンワールド」(日本航空などが参加)、「スカイチーム」という3大アライアンスがある。

東京都心上空を通過する飛行ルートの解禁

現在、羽田空港で離発着する航空機は、安全性などの面から東京都心上空を避ける飛行ルートで飛んでいる。しかし、都心上空を通るルートを解禁することで、1時間当たりの離発着回数を増やすことが可能だという。羽田空港の利用者が増えている現状に対応するため、国土交通省が実現を目指している。

(4)関連業界とのつながり

地方自治体

地方自治体や政府と協力して日本の魅力を発信し、訪日外国人を増やす試みも行われている。

旅行・ホテル

旅行会社と協力して魅力的なツアーを提供することが、旅行者を増やすカギとなる。航空会社がホテルを経営するケースもある。

重工メーカー

国内重工メーカーが開発した新ジェット機は、小型・省エネで国内の短距離路線に向き、国内航空メーカーからも受注を得ている。

監修:日本総合研究所 吉田賢哉

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