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特集002|社会を動かすTOPエンジニアになるための秘訣。

儲けることだけを追いかけたプロジェクトは、人を幸せにすることができない。株式会社IHI 電力事業部 ブロジェクト部 プロジェクトマネージャー 課長 渡邊康一

INTRODUCTION
三度の飯よりクルマが好き→動力機械工学科に入学→内燃機関の燃焼工程を研究。渡邊は自動車メーカーでエンジンの開発を手掛けるはずだった。少なくとも、指導を受けた恩師からその言葉を聞くまでは。「人間が生きていく上で必要なものは二つある。ひとつは食糧。もうひとつはエネルギーだ」。電力の供給を支えるエンジニアになろうと方向転換をして17年。日本、台湾、アルジェリア、オーストラリアと渡り歩き、巨大な発電システムを手掛けるたびに磨いてきたものは、モノづくりの腕だけではない。

世界一のボイラを建てた。
でも、満たされなかった。

「"建設部"を希望すれば、海外で仕事ができるかもしれない」 入社1年目。私は発電の要となるボイラの据え付けを行うその部署に配属された。現地に輸送されてきたパーツの組み立てを取り仕切る、現場監督が私の役目だった。なかでも記憶に残る"作品"がある。「渡邊、四国に飛んでくれ。つぎの案件は"世界一"だぞ」 徳島県橘湾火力発電所。ボイラの能力は1050メガワット相当。関西や中国、九州地方の電力まで賄える。その性能は現在も破られていない。16階建てのビルの高さをもつ言わば"湯沸し器"は、着工して2年半後に完成。電力の供給が始まったときの達成感は今も忘れられない。「この仕事は、地図に残る仕事でもあるんだ」 もし自動車メーカーを選んでいたら、味わえない喜びだった。しかし、満足しきれない自分もいた。「早く海の向こうでボイラを建ててみたい」 思いは募るばかりだった。

やりたいことは、
"点"ではなく"線"の最適化。

「おまえ、海外でやりたいんだろ?」 入社5年目。ついにチャンスが訪れた。「やりたいです!」「じゃあ台湾に行かせてやるよ、"所長"として」「えっ!?」 発電所を建てることに変わりはないが、組織の規模も責任の大きさも"現場監督"とは桁違いだ。ただ、不安を感じている暇などなかった。前任の所長の異動もすでに決まっていたからだ。「とにかく、やりきるしかないな」3年間の駐在生活が始まった。工程表を守り、コストを管理する。もはやエンジニアとは呼べない自分がいた。ただ、おかげで新たな喜びを見つけることもできた。組織のトップとして"舵を取る"喜びだ。そして気づく。「プロジェクトマネージャーの方が、面白い仕事ができるかもしれない」受注→設計→調達→製作→輸送→建設→試運転→引渡し。一連の流れの中で、建設という"点"の最適化に努めてきたが、つなげた"線"の最適化を手掛けてみたいと思ったからだ。台湾の建設現場で過ごすうちに、"安全"に対する意識も大きく変わった。工事に携わる作業員をいかに事故から守れるか。「現場で死者を一人も出さないことは、実は大変なことなんだ」以前海外で所長を務めた人から聞いたその言葉の意味がようやく分かった。高さ2メートルの鉄骨から落ちても命を落とすことだってある。安全を呼びかける朝の集会は、ただの"儀式"ではないのだ。「プロジェクトとは、どうあるべきなのか」理想を見つけるためにも、私は異動希望を出そうと決めた。

本音で語り合えば、
人は必ず分かり合える。

「渡邊さん、全員を集めました。そろそろ始めますか?」 入社8年目。プロジェクトマネージャーとなった私は、北アフリカの国アルジェリアで安全集会を開いていた。作業員は延べ1000人。言葉も宗教も文化も違う多国籍な人間たち。安全に対する意識の落差にしても簡単には埋められない。それでも私は訴えつづけた。「安全は、私たちのためではない。あなたやあなたの家族のためにある。どうか分かって欲しい」 回を重ねていくうちに、握手を求められることも多くなった。そして、4カ国語で"ここは危険"と書かれた看板があちこちに立つ建設現場には、作業員同士が笑顔で声を掛け合うシーンも増えていく。私はプロジェクトが成功する手応えを感じていた。しかし、ビジネスはそれほど甘くはない。「1日7000万円か。あっという間に利益が飛ぶな」 引き渡しが遅れた場合の罰金条項を読んで、私は契約書を閉じた。アルジェリアは天然ガスの輸出で世界第2位の国。天然ガスを液化するプラントが休業することは、この国の経済が立ち往生することを意味する。「工程は1日でも短縮してほしい。老朽化したボイラの解体期間も含めてだ」クライアントは苛立っていた。工程表は可能な限り時間を切り詰めたが、実際の工事はなかなか計画どおりに進まない。問題点を洗い出したリストは300を超えていた。そしてまた工程表を練り直す。あるとき会議の席上でクライアントと口論になった。「ミスターワタナベ、実現できないプランを出してこないでくれ!」「吟味を重ねた結果です。なぜできないと言い切れるのですか?」感情的になった自分を後悔しながらも、私は想いをぶちまけた。「資源に恵まれたあなたの国は、大きな可能性を持つ国です。ただ、今は危機に瀕している。だから私たちは救いたい。それだけです」この出来事がきっかけで、"壁"は取り払われた。発注側と受注側という関係から、苦難を共に乗り越えていく同志になれたと思う。4缶の巨大なボイラは期限に滑り込むように引き渡された。本音で語り合えば、人は必ず分かり合える。アルジェリアは、信頼関係とは何かを私に教えてくれた国だった。

いつも自分に問いかける。
「みんなハッピーだろうか?」

「プロジェクトの目的は、全員が幸せになること」入社17年目。この答えを見つけたことが、予測できない問題をどんなに抱えたとしても解決しようとする"執念"になっている気がする。エネルギーを必要とする人々も、供給するクライアントも、作業員やその家族も、会社も私も、みんながハッピーになれないプロジェクトはやる価値がないとさえ思う。自分の達成感や会社の利益だけを目的においたら、幸せになれる人はきっと減るだろう。一つの仕事を終えたとき、いつも大きな達成感と共に、"やり残した感"も残る。だから私は今もプロジェクトマネージャーとして、また新しい幸せを探して世界を渡り歩いている。

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